藤井先輩と私。
「でもある日ね、私が仕事でミスしちゃって…一人会社に残って残業してた時に、お父さんが手伝ってくれたのよ」


へぇ。

お父さん優しいじゃん。


「どうして、手伝ってくれたんですか?って聞いたらお父さんなんて答えたと思う?」


「ん~分かんない」


「おいっ母さん!」

お父さんはすごくあわててる。


「『ほっとけなかったんだ。君のことが気になって』って。その時は、その言葉に深い意味はないって思ってたんだけど。それがお父さんの告白だったみたいで、それから毎日のように一緒にランチ食べたり、家まで送ってくれたりしてくれてたの」


「母さんが鈍感すぎるんだ」


なんだかこんな話聞いたことあるような。

梶瀬君を思い出した。


私の鈍感っぷりは、お母さんからの遺伝みたい。


「会社の中でも、お父さん、女の子たちからの誘いを全て断っていたし、もしかしたら彼女でもできたんじゃないかなぁって思って、一緒にランチ食べてるときに聞いてみたのよ『お付き合いしてる方がいるなら、ランチ一緒に食べないほうがいいんじゃないですか?彼女さんに誤解されてしまいますよ』って」


お母さんすごい。

お父さんは、お母さんと付き合ってるつもりなのに、そんなこと言っちゃうなんて。


でも…分かるかもしれない。

私の好きな人が、自分のことを好きでいてくれているなんて、そんなこと考えられないもんね。

そんなふうに思えても、ありえないありえないって思ってしまうもん。

 

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