藤井先輩と私。
「あの…先輩…今なんて…」




のどの奥から絞り出した声は、すこしかすれて震えてる。



頭の中は真っ白で、思考回路はショート寸前。






「陽依、今だけ『陽依』って呼ばせてくれ。陽依が俺のことを好きじゃなくてもいい、ただ俺気持ちを伝えたくて」





先輩の口から私の名前が呼ばれるたびに、心がはねる。


「先輩は…私のこと嫌いじゃないんですか?…最近ずっと避けてたのに」




「避けてなんかない!ただ少し気まづくて、フられるのが怖くて逃げてた」




フられる?


フるのではなく?


えっと……。




「誰が誰をフるんですか?」




「そりゃ、陽依が俺をに決まってるやろ」







なにかが、私の中でつながった。



おそるおそる、私は慎重に先輩に質問する。







「先輩って…私のことが好きなんですか?」




「そうや、でも陽依は俺のこと好きちゃうだから、気持ちだけでも伝えとこうって」







先輩が私のことを…。



考えても、ないないって諦めてたことが本当になるなんて。


うそみたい。


先輩が私のことを好き?


いつ私は先輩のことをフったんだろう。


そんなことするわけないのに。


私だってフられるって思ってたのに。



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