【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
ベッド脇のソファに凭れ、大きな窓に顔を向けた。
空が白んできた。
夜が…明けようとしていた。
《真神総合病院》…真神の経営するこの病院に泥まみれの僕が駆け込み…顔を知る身内である院長が大慌てで対応してくれた。
総合病院なんて掲げているから当然一般の診察も受ける大病院だが、働く医師や看護師は真神の者だけだ。
人狼である僕達一族は普通の病院には入れない。ここは一族の為の病院だ。
…ワケアリには、慣れている。
特別室に彼女は入った。
白いベッドに寝かされて、包帯でぐるぐる巻きの小さな彼女は麻酔で深い眠りに落ちている。
意識はまだ…戻らない。
治療は緊急の手術になった。
…彼女の受けた傷は、深かった。
どれほどの目にあったのか…
至るところに打撲傷、肋骨も数本折れていた。
そして、
一番…酷かったのは…
『……っ』
眠り続ける彼女の…包帯まみれの手をそっと取った…。
包帯を巻かれているにもかかわらず、小さな細い手を…包み込むようにして…。
――――神様。目覚めた彼女に…僕は何と言えばいいのでしょう。