龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
「志鶴は眠い?」

「そうでもない」

ずっと眠ってたもの


「少し話せるかな。君の雷恐怖症のこと。話すのは嫌?」

「ううん、別に平気」

「落雷を近くで見た事がある?」

「ない……と思う。よく分からないけどある日突然怖くなったの」

「カウンセリングとか受けた事ある?」

「最初の頃にね。ママが死んだ後だったから『分離不安』とか言われたみたい」

「そこで治らなかったんだね?」

「そうじゃなくて――治ったふりしたの」


圭吾さんは驚いたようだった。


「親父一人で子育ては無理だって誰かが言ってるの聞いたの。だから」

「じゃ、お父さんは恐怖症の事を知らないの?」

「治ったと思ってる」

「僕にはなぜ話してくれなかったの?」

「話したでしょ」

「雷の音が『苦手』って言ったんだよ。へたりこんで吐くほど『怖い』とは言わなかった」


わたしはちょっと考えてから口を開いた。


「心配かけたくなかったんだと思う」
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