はぐれ雲。
ベッドに横たわる亮二にリサが耳、首を通って、胸元へと唇を這わせていく。

リサの長い髪が、亮二の胸の上でとぐろを巻いていた。

「亮二」
彼女はキスを求めた。

ゆっくりと唇と重ねると、亮二も目を閉じる。

そして、次第に激しく相手の唇を奪い始める。

亮二はリサを抱き寄せると、自分が上になった。
細い腕が、彼の首にからみつく。

「亮二、愛してる」

リサがそうささやいた途端、彼は動きを止めた。

「亮二?」
リサが驚いたように体を起こす。

「どうしたの、まだ途中よ」

彼は無言でベッドから出た。

「やだ、帰るの?」

亮二が服を着るのを見て、リサもベッドから出る。

「ねぇ、亮二ってば」
必死でリサは彼の腕をつかんだ。

不安だった。

博子という女を呼び出した一件で、まだ亮二が怒っている気がした。
「リサ」

目を合わすことなく、亮二は言う。

「クラブの、AGEHAの経営は全ておまえに任せる。好きなようにしろ」

「…急にどうしたの?前に全部任せてほしいって言ったけど、どうして今なの?」

亮二はバッグから分厚い封筒を取り出すと、ベッドの上に放り投げた。

「何?」
その封筒を手に取り中を見ると、金がはちきれんばかりに入っていた。

「もうプライベートで会うのは、これきりにしたい」

リサの表情が一変する。

「何で…意味わかんない!何よ、手切れ金のつもり!?」
そう叫ぶと封筒の中身をぶちまけた。

一万円冊が蝶のように舞う。

「嫌よ、別れるなんて、絶対に嫌!」
全裸のまま、リサは亮二にすがりついた。

「ねぇ、この間のこと怒ってるの?あの女を呼び出したこと、まだ怒ってる?」

亮二は何も言わない。

「お願い、何でもする。あたしと別れるなんて言わないで」

懇願するリサに亮二は言った。

「金が足りないようだったら連絡してくれ。改めて届けさせる」

そう言って、そばにあったバスタオルをリサの肩にかける。

「嫌よ…亮二」

彼が出て行った部屋には、一万円札が床を埋め尽くしていた。

その上にリサは崩れ落ちる。

<何もかも…終わりだ。あの女のせいで>





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