はぐれ雲。
「その男と…新明亮二と会っていたのか?」
達也は博子に詰め寄ると、彼女は目を閉じた。
もう嘘はつけないと思ったのか、彼女は小さく頷くと、口を開いた。
「偶然街で再会したの。15年ぶりだったから、懐かしくて。それから何回か、食事に行ったりしたわ。でも!」
そして訴えるように付け加えた。
「でもただそれだけよ。決して私たちはやましい関係じゃない。警察情報の漏洩なんてありえない!」
達也にしがみつく。
「決してそんなことはしてない!」
彼女の瞳をしばらく見ていた達也は、自分の腕をつかむ細い手をもぎとるようにはずした。
「『私たち』…か」
そして諦めたように笑う。
「やましい関係でないのなら、どうして俺に黙っていた。深い関係になっていないのなら、俺にも彼の話はできただろ、昔の知り合いと再会したって…言えたはずだ」
「それは…」
返答に詰まった博子に、彼は続けた。
「そうできなかったのは、彼が暴力団幹部と知っていたから…そうじゃないのか」
ペタンと座り込むと、博子は首を横に振った。
「…知らなかったわ」
「嘘をつくのは、もうやめてくれないか!」
達也は博子の肩を強く揺さぶった。
無抵抗な彼女の体は前後に大きく揺れる。
「あいつらは何の罪もない人たちを騙して、金を奪い取る。覚醒剤を売る、銃を売る!果てには人を殺すことだってあるんだ。この世の悪なんだよ。なくさなければならない、悪なんだ」
「悪?」
博子は見開いた目で達也を見た。
「そうだよ、悪だ。俺たちは最低の悪を排除するために、夜も寝ずに家族を犠牲にして働いているんだ。わかるだろ?あいつらは悪でしかないんだ」
「最低?彼らの全てが悪で、最低なの?」
「そうだよ」
「…そうかしら」
今度は博子が達也の手を振り払った。
「私はそうは思えない」