それでも君が。




──私の目を見たまま、動きもしない。





「キスして」





咄嗟に出た言葉だったけど、浅はかだとは思わない。



キスしてほしかった。



さっきしたばかりだけど。



私にしかしないことを、してほしい。



他の誰かにはしないコトを、してほしくなったの。



蒼君の手が私の頬に当てられ、その手の親指だけが、上下にユルリと動く。



少しだけ前に身体を乗り出し、目をつぶると、唇に慣れた感触が広がった。



他の人とでも、こんなに温かく、優しい感触を得られるのだろうか。



──ううん、違う。



きっと、相手が蒼君だから。



好きで好きで……



愛しくてたまらない蒼君だから。



自分から更に唇を押し付け、彼の唇を自分のものにしようとする。



こんな……



彼の唇を自分の唇で満たしたからと言って、蒼君の全てが手に入るわけじゃないのに。



どうして……



手に入るような気がしてしまうんだろう。




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