それでも君が。




私達の前でその足をピタリと止めた秋山先輩は、腕組みをしながら、私の目をジッと見てきた。



挑むような目とは、このことだと思う。



まるで私の心の中を見透かそうとしているかのような、鋭い眼光。





「……何ですか?」


「蒼汰と別れる気は、全くないの?」


「……ありません」


「あなたって、か弱いんです、みたいな顔して、結構図太いよね」


「図太くて結構です。私、蒼君とは別れません」





私の声は、私と藤堂君と先輩の他には誰もいない夕方の教室で、やけに響いた。



心臓が、ドッドッドッと鼓動を刻んでいるのが分かる。





「ふぅん……」





まるで値踏みをするかのように、私の身体の頭から足まで視線を滑らせる。



私が引かなきゃいけない理由なんて、ない。



蒼君のために、がんばるんだから。




< 200 / 292 >

この作品をシェア

pagetop