それでも君が。
私達の前でその足をピタリと止めた秋山先輩は、腕組みをしながら、私の目をジッと見てきた。
挑むような目とは、このことだと思う。
まるで私の心の中を見透かそうとしているかのような、鋭い眼光。
「……何ですか?」
「蒼汰と別れる気は、全くないの?」
「……ありません」
「あなたって、か弱いんです、みたいな顔して、結構図太いよね」
「図太くて結構です。私、蒼君とは別れません」
私の声は、私と藤堂君と先輩の他には誰もいない夕方の教室で、やけに響いた。
心臓が、ドッドッドッと鼓動を刻んでいるのが分かる。
「ふぅん……」
まるで値踏みをするかのように、私の身体の頭から足まで視線を滑らせる。
私が引かなきゃいけない理由なんて、ない。
蒼君のために、がんばるんだから。