それでも君が。




藤堂君が、少しビックリしたように目を見開き、私を見下ろす。





「おまっ……何泣いてんだ!」


「泣いてない!」


「いや、どう見ても泣いてっから!」


「うるさい! 藤堂君が嫌なこと言うからでしょっ!」





私はまた更に、彼の胸を殴った。



澪ちゃんの胸で泣いた日から、何故か私の涙腺が緩くなった気がする。



何でかな。



今まで張り詰めてたものが……



一気にパンッて弾けたみたいになって……





「イタい奴だって、分かってるもん」





そう言うと、藤堂君は「は?」と言って、独り言のように、こう付け加えた。




< 208 / 292 >

この作品をシェア

pagetop