それでも君が。
──藤堂君……。
吐き捨てるように言ったけれど、何だか、彼の本当の優しさを知ってしまったみたいで……
ほんの少し、居心地が悪い。
「……おい、アンタ、何にも言わねぇんだな。じゃあ、例え俺が強引にコイツを自分のものにしても、何も言うなよ!」
藤堂君はそう言うなり、蒼君から手を離し、今度は私に向けて手を伸ばしてきた。
ギョッとする間しかなかった。
その自分に向かってくる手がやけに怖く見えて、身体を強ばらせる。
すると、その手が私にたどり着く前に、ガタッという大きな音が響いた。
目を見開く。
今度は、蒼君が藤堂君の胸ぐらを掴んでいたのだ。
「蒼君!」
やめてほしいという思いを込めて叫んだけど、彼はまるで聞こえていないかのように、藤堂君だけをその目に収めている。
心臓の辺りがヒリヒリとするのが分かった。
──怖い。
ただそれだけだった。
それが、藤堂君に対してなのか、蒼君に対してなのか、分からないけれど……。