それでも君が。
そこには、椎名先生の他に、美人な女の人と、3歳くらいの男の子が写っていた。
男の子はちょっと泣きそうになっていて、それを女の人が眉を下げて見ている。
でも、先生もその女の人も、微かに笑みを浮かべていて……
何というか、とてもいい写真。
「椎名先生」
「ん?」
「この写真に写ってるの、もしかして先生の家族ですか?」
「ああ」
「意外です。先生が写真持ち歩いてるなんて」
「現国の冨平先生がうちに遊びに来た時に、撮られたんだ。それを渡されただけ」
「ふぅん……」
先生がこんな優しい表情をするなんて……と、すっかり心がほぐされた気がしたのに。
「写真とか嫌いなんだけどな」
ポソリとそう言った先生は、タバコを口にくわえたまま眉をしかめた。
──せっかく感動したのに。
「先生って、家でもそんなに素っ気ないんですか?」
椎名先生は煙を吐きながら、横目で私を見た。