それでも君が。




「……蒼君も……優しい」


「あっそ。良かったなぁ」


「せ、先生、クラスの男子より意地悪!」


「そりゃどーも」





精一杯の嫌みだったのに、先生はシレッとかわし、晴君に「それクラスに持っていけ」と言った。



そして、教室の入り口に向かう。



扉を開けながら、先生は背中を向けたままこう言った。





「お前らは悩むのが仕事だ。思う存分悩め」





ピシャリと閉められた扉。



私と晴君は顔を見合わせた。





「年の功ってやつだな」





晴君の言葉に、頷いた。



伊達に年取らないって、すごい。





「行くか」


「うん」





晴君も私と同じようにプリントの束を持ち、扉に向かっていった。



私もそれに続く。



廊下に出ると、どこからともなく、楽しげな声が聞こえてきた。



お昼休みだからだ。




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