それでも君が。
ふと顔を上げると、お母さんが唇を震わせているのが目に入った。
そして、私とは目を合わせないまま、テーブルに向けて、言う。
「お母さんは……お母さんはね……誰が何と言おうと、1人娘のあなたが大事よ」
「……お母さん」
「誰を犠牲にしたって……あなたを守りたい。あなたが傷付かないためなら、鬼にだってなるわ」
「お母さん……何言って……」
「でも……羽月にだって、守りたいものが、あるわね」
フッと息を吐き出し、こちらを向いたお母さんの目に、涙の膜が張っていた。
胸が、またキュッとなる。
「……来たわ。蒼ちゃん」
「……! 本当?」
「うん。昨日の夜。部活が終わってすぐ、駆け付けてくれた」
「……何か……言ってた?」
「あなたの部屋にいたのは、5分くらいだったかな……。それで降りてきて、俺が来たことは羽月には言わないで下さいって。それだけ言って……」
「………」
「ごめんね。羽月」
黙っていたことを謝ってるのだとすぐに分かった。
私は首を横に振り、お母さんに抱きついた。