それでも君が。
「……ありがとう、お母さん」
「……行くなら、早く行きなさい。蒼ちゃん、行っちゃうよ」
私は大きく頷き、パジャマを脱いで、ベッドの上に置いていた部屋着──ティーシャツとジーパン──を身につけた。
着る服を選ぶ時間も、もったいないから。
急いで階段を駆け下り、走りやすいスニーカーを履き、傘を持って家を飛び出た。
──いくら蒼君に口止めされていたからって……何で、蒼君が来たことをあんなに頑なにお母さんが言わなかったのか。
それと、お母さんが私を想って鬼になることと、どう繋がるのか……。
全く分からないけど。
でも、今はただ走るだけだ。
蒼君に伝えたい。
私も、好きって……。