それでも君が。




頭の中で、映像が流れた。



走馬灯のように。








──あの日。




蒼君がいきなり冷たくなった、少し前。




その日も、雨だった。




私と蒼君は一緒に帰路についていて……




蒼君は課題のプリントを忘れたと言って、学校へ戻っていった。




彼に傘を貸した私は、バス停で待っていた。




そこからの記憶が……箱の中に閉じ込められていたんだ。








──そのバス停の前は人通りが少なくて。




雨のせいで、空気はねずみ色で。




不気味だなって。




蒼君、早く戻ってきてって。




そんな風に思ってた。




パシャッ……て、水たまりの水が跳ねる音がしたから。




蒼君かなって、急いで顔を上げた。




そこには、帽子を目深にかぶった、無精ひげを生やした男が立っていたんだ。




紺色のジャンパーが、やけに目に焼き付いた。




男は一瞬だけ周りに目をやり、誰もいないと確認したのか、その無骨な手を私に向かわせた。




さっきみたいに、声が出なかった。




怖くて




怖くて




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