それでも君が。




私、殺されるのかな、なんて。




そんな考えが頭に浮かんだ。




だって、男は私の腕を掴んでいる手とは反対の手に、ナイフを握っていたから。





──こっちに来い!




男は無理矢理私を歩かせようと、引っ張る。




私の足だけが、抵抗してくれた。




でも、男の手の中で光るナイフが怖くて、それもむなしかった。




蒼君の名前を、頭の中でたくさん呼んだ。




お父さんでも、お母さんでもない。




蒼君の名前だけを、呼んだ。




でももう、無理かも……!




そう思った瞬間だった。






──何してんだよ!




< 272 / 292 >

この作品をシェア

pagetop