それでも君が。




その時も、心が反応した。




蒼君だって。




蒼君が、来てくれた──。




一気に安心した気持ちを感じる自分と、あと一つの感情を持つ自分。




……蒼君、危ないよ。




相手は、ナイフを持ってるんだよ……!




そう言いたかったのに、声が出なかったの。




怖くて混乱して。




第三者に見つかったからか、犯人の男も混乱したんだろう。




ふと私の手を離した。




私は“今だ”と思って、力の入らない足を引きずり、蒼君の方へ駆け寄ろうとした。




──クソっ!




背後から、男の声がした。




てっきり、逃げようとしてるんだと思って、安心したんだ。




蒼君はもう、すぐそこにいて。




助かったんだ……助かったんだって……




そう思ったのに……。




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