それでも君が。
すると蒼君は、肩に乗った藤堂君の腕を払い、彼をギッと強く睨んだ。
「俺の彼女の前で、下品な言葉使わないでくれないかな。それと、勝手にベタベタ触るのもやめろ」
──語気が、強い。
そんなに怒ってるようには見えない、けど。
幼稚園の頃からずっと一緒にいるから分かる。
蒼君、かなり怒ってる……?
「……ふーん。お姫様って訳。そんなツラじゃねぇけど」
「余計なお世話!」
すかさずそう返すと、藤堂君は肩をすくめて、私達に背中を向け、また校舎の中に入っていった。
むー……!
そりゃ、そりゃ可愛い顔とはかけ離れてますけど!!
だからってエロエロ大魔王には言われたくな……
「羽月。帰るぞ」
「あっ……う、うん」
蒼君の少し固い声が、昇降口に響く。
彼は既に靴を手にし、それを土間に乱暴に下ろしていた。
私も、それに続く。
何だか、エロエロ大魔王のせいで、私達の間の空気が重くなってしまった気が……。
覚えてろよ。
靴を履いて、傘を持ち、先に外に出た蒼君を追った。
彼は、雨がザーザーと降りしきる空をジッと見ていた。