それでも君が。
「何してんの」
藤堂君のものではない声が耳に入り、顔を上げる。
低いけど、よく通るその声の主は、藤堂君の横に立っていた。
「蒼君!」
「待たせてごめんな。帰ろうか」
「うん!」
私の腕を未だに掴んでいた藤堂君の手を振り払い、蒼君の横に立つ。
すると、それを見ていた藤堂君は、クッと噛み殺すかのように笑い、蒼君の肩に肘を置いた。
「あんたも大変っすね。ヤらせてくれない彼女とか」
「……羽月と同じクラスの奴?」
藤堂君の言葉を無視して、私にそう聞いてくる蒼君。
私は、一回だけ頷いた。