それでも君が。




「羽月……まだ蒼先輩から連絡来ないの?」


「………」


「携帯は?」


「……繋がらない」


「……何か、あったのかな?」


「何かって……?」


「た、例えば……事故……とか……」


「事……」





縁起でもないことを、と言おうとしただけだったのに。



それなのに、急に頭に鈍痛が走った。



額に手を当て、その痛みが通り過ぎるのを待つ。





「は、羽月! 羽月……大丈夫!?」


「だ……いじょうぶ……」


「ごめん……ごめん、羽月」





縁起でもないことを言ったからだと思っているのか、澪ちゃんはそう謝ってくる。



私は頭を横に振り、また額に当てた手に力を入れた。





「大丈夫だよ……まだ時々……出るの」





そう言うと、澪ちゃんは押し黙ってしまった。








ズクン……ズクン……



と波打つ痛みに耐えている内、思考回路が戻ってきた。



──本当に、事故とかだったら、どうしよう……。



そんな思いがよぎったけど、すぐに打ち消す。



そんな訳ない。



それなら、彼女の私が何も知らずにいる訳ないもん。



知らずにいる訳ない……けど。



連絡がつかない理由も知らないのに、そんなことは胸を張って言えないのかな……。




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