それでも君が。




「あ、れ……?」





私の前を歩いていた澪ちゃんが、気の抜けた声を出した。



後ろから、声をかける。





「澪ちゃん?」


「今……蒼先輩がいたような……」


「……え?」


「あ、ごめん、違うかもしれないんだけど……蒼先輩、背が高いから、周りの人より頭一個飛び出すでしょ」


「……ん」





私は澪ちゃんの横に立ち、少しだけ背伸びをしてみた。



さっきの店同様、夏休みだからか、街中はすごい人で。



少し先の道さえ見えないくらいだ。



知らず知らず歩を進めていた私の目に映ったのは、疑いたくなるような事実。





「……蒼……くん……」





思わず声に出した私の肩に手を置いた澪ちゃんは、「え?」と聞き返してくる。



私が何も答えずにいると、澪ちゃんは私の肩に手を置いたまま、自分でグッと背伸びをした。




< 58 / 292 >

この作品をシェア

pagetop