それでも君が。
「あ、れ……?」
私の前を歩いていた澪ちゃんが、気の抜けた声を出した。
後ろから、声をかける。
「澪ちゃん?」
「今……蒼先輩がいたような……」
「……え?」
「あ、ごめん、違うかもしれないんだけど……蒼先輩、背が高いから、周りの人より頭一個飛び出すでしょ」
「……ん」
私は澪ちゃんの横に立ち、少しだけ背伸びをしてみた。
さっきの店同様、夏休みだからか、街中はすごい人で。
少し先の道さえ見えないくらいだ。
知らず知らず歩を進めていた私の目に映ったのは、疑いたくなるような事実。
「……蒼……くん……」
思わず声に出した私の肩に手を置いた澪ちゃんは、「え?」と聞き返してくる。
私が何も答えずにいると、澪ちゃんは私の肩に手を置いたまま、自分でグッと背伸びをした。