それでも君が。
「……隣にいるの、バスケ部マネージャーの秋山先輩じゃない?」
私の疑問を口に出したのは、澪ちゃん。
信号待ちをしているんであろう蒼君の隣には、確かに、ウェーブがかった髪の毛を揺らす秋山先輩が。
「ちょ……どうして……!?」
ボーっとするしか出来ない私の横で、少し強い口調で澪ちゃんがそう呟く。
暑さのせいで少し汗ばむ手を、ギュッと握り締めた。
──蒼君……?
私、ここにいるよ。
いつもみたいに、“羽月”って呼んで、笑顔で駆け寄ってきてよ。
でも、まっすぐに信号機だけを見ている蒼君は、気付きそうにない。
すると、蒼君達が渡ろうとしている方の信号機が青に変わり、青を示すメロディーも変わった。
秋山先輩と一緒に足を踏み出す蒼君の横顔は、無表情で……
何だか怖くもあった。