それでも君が。
それでも、私の言葉に反応し、止まってくれた。
それだけでも、ホッとしたの。
だって、またさっきみたいな態度取られたらって思ったら……
私も立ち上がり、蒼君との距離を縮めるように、足を踏み出す。
「蒼君っ……あの……」
どう切り出すか、何も考えないままに出された言葉は宙に浮き。
それと共に彼の腕に伸ばした私の手は……
蒼君によって振り払われた。
ペシッという控えめな音だったけど。
私には十分、痛く感じた。
「触るな」
その言葉もまた、痛みを連れてきた。
その言葉の意味が、分からなくて。
振り払われた手が、ジンジン痛くて。
ボーっとする私に、蒼君は続けた。
「晴斗と仲良くしてもらえよ。俺帰るから」
「蒼汰」
蒼君を諫めるような声で彼の名を呼んだのは、晴君。
でも私の耳には、さっきの“触るな”がエコーしていて……
耳までジンジンしてくる。