それでも君が。

蒼君が支えたおかげで転倒を免れたその男の人は、目を見開き、「び、びびったー！」と言った。



ビビったのは私だと、よっぽど言いたかったけど、やめといた。





「気をつけて下さいね」





蒼君は無表情でそう言い、自転車を立て直してあげている。



男の人の後ろで呆然としていた彼女は、そんな蒼君を見て少し頬を赤く染めた。



──私の彼氏なんだから。



と、よっぽど言いたかったけど、やっぱりやめといた。



私と蒼君に謝った２人は、今度は姿勢を良くしながら、歩いていった。





「羽月、ケガないか」





振り向いた蒼君の顔を見て、言葉を失った。



言葉を失う程──