執事と共にお花見を。
恵理夜は、桜餅の包み紙を正三角形に折り始めた。


折り紙――恵理夜の考え事をするときの癖だ。


恵理夜の本領が発揮され始めたのを感じ、春樹の目元が緩む。


10年前のポスター・親子を見つめる・傷ついた桜・白濁した瞳・怒り・献花・昔の事故・咲かない桜を待っている・女性――

様々な言葉が、折り目の度に浮かんでは消える。


そして、一輪の紙で出来た桜の花が完成した。
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