ももいろ
そ、そうですよね…。
「ほめんなはい…」
「もうっ。ズレてるんだから」
サツキさんは俺の口から手を外した。
「どうしてショックだったのか、わかってよ。ないでしょなんて、言わないで。て伝えたかっただけなのに。司くんの変態」
変態って。
「それに、あたし、司くんとはしたくない」
…。
ショーック。
いやいや、別にシタイから好きとか、もうしたくてしたくてしょーがないとは、思ってないよ?
そりゃ、触りたいけどさ…
悶々としたけどさ…
できるならシタ…何言ってんだ俺。
こほん。
そういうのばっかりじゃないから。
サツキさんが、仕事で気持ちいいとかそういうのなさそうなのは
ゴメンナサイ、ちょっと安心しちゃいました。
逆に、プロって恐ぇ!とびびりましたけど。
セックス嫌いなのかなと思った。
ただ、したくないってキッパリ口に出されると凹む。
まあ、でも、うん。
「わかってるよ…」
「あの、嫌なんじゃないから。仕事、変わるまで…ね」
「え?仕事変わる?」
俺は喜んだ。
「いつかね。仕事もほかのことも、すぐには無理…」
「…うん」
俺はサツキさんの頭をヨシヨシした。
「そうだよね」
俺が忘れさせてやる!とも
俺の側にいろ!とも
俺だけ見てろ!とも
すぐ俺のものになってくれ!とも
言いたいのに言えない俺。
だって、ノー経済力。
情けない…。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、サツキさんは言った。
「司くんのおかげで、少し前向きになってもいいのかなって、思えるようになった」
「サツキさん…」
「5年間、こんな人生は早く終わればいいって思ってた。仕事嫌だけど、あがる理由もないし、あがっちゃいけないような気もしたし、あがったところでやることないし」
「そんなこと!」
「うん。もう思ってないよ、司くんが怒るから」
「そうだよ!」
サツキさんは俺が初めて見る笑顔になって言った。
「司くん、ありがとう」