オトナな初恋
何の事か聞かなくてもわかる。
異動の件だよね。


「別に何もしてな…」


『嘘いわないで!!』


私の言葉に被せるように、甲高い声で否定された。


『…だってそうでしょ?総務と縁の無い、新入社員のあなたが選ばれるなんて、普通に考えてもおかしいわ!』


「わ、私は早坂主任が私を選んだとしか聞いてません。」


『ッ!それが嘘だって言ってるの!だって最初の予定では笹岡さんに決まるはずだったんだから!部長と早坂主任が話していたところを私、聞いてるのよ?いい加減に本当の事言いなさいよ!!』


笹岡さん?
確か早坂主任や関口主任と同期の、総務部の女子社員。


凄く綺麗で信頼も厚そうな、総務の女子社員を束ねるリーダー的な感じの人。


「そう言われても、私も今日呼ばれて、初めて異動と知ったんです!嘘なんか言ってません!」


『〜あんたいい加減にッ…!!』


『いい加減にするのは桜井さんではなく、あなたたちのほうよ。』


トイレの入り口から冷静な声が聞こえてきた。


全員が声の方向を見る。


そこには腕組みをした笹岡さんが立っていた。


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