オトナな初恋
『随分飛躍した話だな。そんな気にすることでもないだろう?』



「気にします!!好きな人に嫌われたらどうしようって!!」


『す、き…な…人?』



「ッ!!」


あ…っと思った時にはもう遅い。



早坂主任を思い切り押しのけて、足元にある鞄を掴む。


そして玄関へ走った。



どうしよう!




どうしよう!!



あんな風に伝えてしまうなんて。
私、私なんで言っちゃったのッ?


片方の靴に足を入れた時だった。







フワっと体が包まれる。



私の肩の上には早坂主任の頭が乗ってる。




え?
私今、抱きしめられてる?


何が起きたのかわからない。


「早坂主任?」




『言いたいことだけ言って、逃げるなよ。』


耳の近くで声が聞こえてきて、体がビクッと震える。



『そんな事させない。』




更に強く抱きしめられる。


「早坂主任?」


もう一度問い掛けた。



どうして?抱きしめてくれるの?





『嫌いになんか…ならねーよ。』



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