オトナな初恋
肩を掴まれグイっと後ろを向かされる。

下を向いたままの私の顎を持ち上げる。


「やッ!」

泣いてるの見られちゃう。

早坂主任の力が強くて抵抗出来ない。


『なんで泣いてる?泣くほど気持ち悪いのか?』


「違い…ます…ツ あの離してください。」


『何があった?ちゃんと言わなくちゃわからない。』


ちゃんと?
言ったらどうなるの?
言って早坂主任にウンザリするって肯定されたら……


黙っている私に早坂主任は悲しげな顔で聞いて来た。


『もしかしてさっきの事で怒ってんのか?』


さっきの事?


『俺が、家まで連れて来て…ソファに寝かせて、それで…その…』


言ってることがわからない。だって、怒ってるのは早坂主任の方でしょ?


現に寝起きで言われた言葉は少し棘のあるキツイものだった。


『悪かった。あんな事はもう……』


「怒ってるのは早坂主任の方ですよね?ごめんなさい。私…飲めもしないのに、いい気になって飲んで酔っ払って…仕舞いには…ヒック…寝て、こんな…ッく。吐いて迷惑かけちゃうなんて…。」


早坂主任の言葉を遮って一気に話した。


『それで泣いてたの…か?』


「だって、こんな姿見せちゃったら…ぅぅ…ウンザリされちゃう…と思って…ッく。そ…れに…き、嫌われちゃう…って…ッ」


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