【キセコン】とある殺し屋の一日
己の上で楽しそうに笑う藍のほうが、よっぽど怖いと思いながらも、与一は藍の下から脱出を図る。

「あらあら。よいっちゃんも大人になって、女買うぐらいなんだから、下手に動いたら身体が反応しちゃうわよぅ~?」

「・・・・・・どんだけ根に持ってるんですか」

傍(はた)から見たら、恋人がじゃれているようにしか見えないだろう。
だがこの二人は、言うなれば親子であり、師弟関係であって、間違ってもそのような甘やかな関係ではない。

まるで恋人同士の会話なのだが。

「だって、可愛いよいっちゃんが、道を誤ったら困るもの~っ。感情のないよいっちゃんが、そっち方面にだけ目覚めちゃったら・・・・・・」

一旦言葉を切り、藍は己の言葉に、さっと青くなった。
そして、がばっと身体を倒して与一に抱きつく。

「いやあぁ~~っ!! そんなよいっちゃん、あたしのよいっちゃんじゃない~~っ!!」

むぎゅうっと力任せに抱きしめられて、与一はばたばたと暴れ回った。
見かけは小さな女子(おなご)だが、技は一流だ。

ただ抱きついているだけに見えて、先程から与一が藍の下から抜け出せないように、巧みに足で与一の下半身を押さえつけているのだ。
< 11 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop