【キセコン】とある殺し屋の一日

「ちっちゃいときならともかく、今のよいっちゃんなんて、大人じゃない。女も買うぐらいなんだし」

ぶり返した、と思った途端、与一に向かって鋭い蹴りが突き出される。
ほとんど無意識に身体を捻って避けたが、藍の攻撃が一度で終わるはずはない。
小さいが鋭い拳が、次々繰り出される。

「ちょ、ちょっと藍さん･･････。拳銃の稽古じゃなかったんですか」

顔の前で腕を交差し、防御しながら、与一は後退しつつ尋ねた。
藍は攻撃の手を休めることなく、楽しそうに言う。

「今日は一日稽古だから、そんなずっと拳銃ぶっ放してちゃ、それこそ耳がおかしくなっちゃう。弾ももったいないしね」

だから、準備体操なのよぅっと言いながら蹴り上げられた足を、与一は掴んだ。
そのまま自分のほうへ引き付け、倒そうとする。
だが、藍は素早く自ら地を蹴って、与一に飛びかかった。

「っっ！」

顔を引き攣らせる与一とは反対に、藍は嬉しそうに、遠慮無く身体全体を与一にぶち当てた。

「だああぁぁっ！！」

藍もろとも、与一が背中から倒れ込む。

「ほ～らほら。こんなことじゃ、的を仕留める前に、こっちがやられちゃうわよぅ～。向こうは必死なんだから。知識のない者の破れかぶれほど、怖いものはないわよぅ～」