【キセコン】とある殺し屋の一日
「よいっちゃんも、もう大人だものね。女子の扱いも、ちょっとは知っておかないと。でもほんと、頭良いわよね。さすがのあたしも、的(まと)でない限り、お座敷に乗り込むわけにはいかないもの・・・・・・って、そうだ! もうっ! 拳銃の稽古をほったらかして、色町に繰り出すなんて駄目じゃない!」

思い出したように、藍が与一に詰め寄った。

「折角拳銃あげても、使いこなすには慣れないといけないんだからね!」

「音が苦手なんですよ・・・・・・。耳が痛くて」

「だから、それにも慣れないといけないのっ!」

きゃんきゃんと吠える藍に同調するように、与一の肩の鴉が、くぁ、くぁ、と鳴き声を上げる。
その鴉に、藍は満足そうに微笑みかけた。

「ほらっ。から公も、そう言ってるじゃない。さ、今日も訓練訓練。あっその前に、湯浴みしなさい! 女の匂いつけたまま、あたしに近づかないでよ~」

引っ付いたり離れたり、忙しく与一の周りをちょろちょろしながら言う藍に、与一の目は胡乱になる。

第一与一から藍に引っ付いたことなどない。
色町にいたのだって、藍の言うとおり、唯一藍に捕まらない(だろう)ところだからであり、何も女を買うのが目的だったわけではない。

色事だって、十五になったときに、藍が成人のお祝いだと言って、ほぼ無理矢理与一を遊郭に放り込んだのだ。
自分が覚えさせたのに、与一が自発的に色町に行くのは嫌だと言うのか。

与一は口を開きかけたが、結局諦めたように何も言わず、藍と家路を辿った。
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