切ない恋物語
「すっんげぇ、驚いた」
俺は言った。
「ごめん、ごめん」
慶斗は言った。
「おまえから告ったのか?」
「あぁ。俺さ、もう恋はできないって思ってた。人を好きになるなんて、ないって思ってた。でも、沙姫に出会って、また恋ができそうな気がした。妹のことも沙姫は分かってくれた。いつの間にか沙姫のこと、好きになってたんだよな」



慶斗はとても幸せそうな顔をしていた。




「沙姫を幸せにしないとな」



俺は慶斗を見た。




「絶対幸せにする。ありがとな」




「ありがとう?」




「おまえのおかげだから。おまえが夢果と友達になったから、沙姫に出会えた」




「幸せになれよ」




「おう」




「おまえはまだ、告らねぇの?」



慶斗は聞いた。




「告んない。まだ、今の関係でいたい」




「そっか。おまえが決めたことなら、俺は何にも言わねぇよ。頑張れよ」




慶斗は優しい言葉をかけてくれた。




「ありがとな」






慶斗と別れ、家に帰った。






まだ、告らない。




今の関係を壊したくない。





告白したら、今の関係に戻れないような気がする。





夢果が俺のこと、好きかも分からない。





フラれたら、絶対立ち直れない。





友達としてでも、夢果の近くにいられないのは、つらい。





だから、まだ今のままでいい。






今のままで、夢果の近くにいたいんだ。







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