妄想彼氏
そして着いた場所はマンションの隣にある小さな公園。

その公園は小さいからか、遊具が滑り台と鉄棒しかない。

そのせいでか遊びに来ている人はO。

この公園の唯一の取り柄といえば花が綺麗に咲いている事。

色とりどりの花はとても綺麗だった。

「利緒〜こっちこっち!」

声がしたほうをみると藤坂君がベンチに座っていた。

私はゆっくりと藤坂君の隣に座る。

「…私から話していい?」

「え?あ…いいよ」

「…や…弥生の事、一度も恋愛対象で見たことないの?」

「………ない」

「え…」

「…俺、好きな人いんの」

「………」

まるで自分の事のようにショックで、声も出なかった。

どうしよう。涙が出そうだ。

私はこんな顔見られたくなくて、俯いた。

そんな私をお構いなしに藤坂君は続ける。

「…そいつが意地でも欲しいんだ…」

そして私の頬には熱いものが流れた。

「そいつは友達が悲しんでいたら自分の事のように悲しむ」

「………」

「すっげぇいいヤツなんだ」

「………素敵な人だね」

頑張って振り絞った声は震えていて、聞こえるか聞こえないかくらいだった。

「…ま、そんだけ。だから泣くなって」

そして藤坂君は親指で、私の涙を拭ってくれた…。

「……涙止めてやろっか?」

「え……」

次の瞬間、藤坂君の顔が段々私に近付き、そっと

キスをした――。

そして私の視界で、花から水滴が一つ、落ちるのが見えた。





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