妄想彼氏
駅前にいた彼。時間は…11時5分。

「藤坂君!待たせてごめんね」

藤坂君は一度固まり、そして優しく微笑んだ。

「いいよ、全然待ってないから」

初めて見たかも。藤坂君のこんな柔らかい笑顔。

私はつい見とれてしまった。

「どうかした?」

藤坂君の声で私は我に戻った。

ううん、と小さく返事をして、見とれてた事がバレないように笑顔を作った。

すると、藤坂君は笑いながら私の前を歩いた。私は藤坂君の後に続く。

ちょっと間が出来れば立ち止まり、私の事を待っていてくれていた。

初めて見る藤坂君の笑顔や優しさ。私が知ってる藤坂君の情報は、とにかくモテていて、好きな人がいると言うこと。

弥生は、藤坂君の幼なじみなんだからもっといっぱい知ってるだろうね。

藤坂君の好きな食べ物や、嫌いな物とか。

すると、ふと思った。

弥生はずっと彼を一人の男の子として見てきたのに、ただの幼なじみなんて思った事なかったはずなのに、たった一人の女のせいで、弥生の恋は終わってしまった。

………藤坂君は、弥生の事、幼なじみとしてしか思ってなかったの?

そんなの……悲しすぎるよ。

ねぇ、藤坂君――――。




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