男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
収録が終わったあとも、ことりは茫然として関係者席に座ったままだった。
木村はカメラマンやスタッフと話し込んでいる。
観覧客を退場させて会場は大分静かになった時、
楽屋で着替えを終えた楓が一人戻ってくる。
それに気づきスタッフ達はお疲れ様ですと頭をさげた。
返事をしながらも彼は確実にこちらに向かって歩いてきている。
「ことり。」
楓は自分の目の前で立ち止り、名前を呼んだ。
少しだけスタッフ達がざわつくが彼は気にしていないようすで彼女を立たせる。
「帰ろう。」
「え、あの、」
「あれ、誰ですか?」
「陽さんの妹らしいですよ。」
「なんで楓さんが?」
「さあ?友達なんじゃないですか?」
陽の妹なら、少なからずスカイとも関わりがあると察したスタッフは
対して気にせずに自分の仕事へと戻る。
「何?」
「奥村楓さん、ですよね。」
「....楓でいいよ。」
僕もことりって呼んでるし、と視線を逸らして言われた為にぎこちなく名前で呼ぶと
嬉しそうな顔をして笑った。