男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「今度は奥村楓の妹かよ。」
吐き捨てるようにファンは言う。
怯まずに彩乃はキッとファンをにらんだ。
「帰りましょう、ことり先輩。」
「けど、」
「この写メ、どうなってもいいの?」
脅すように再び写メを見せると彩乃は一瞬驚いたような表情を見せたが、
バッカじゃないの?と毒づいた。
「そんなの、ただの合成じゃない。」
「はあ!?そんなわけ「前にあたしとスカイの陽が熱愛報道されたときに使われた写真も、合成だったもの。
今の時代合成写真なんて簡単に作れるし。
そんなの作ってことり先輩を脅してるなんて、よっぽど暇なんだね。」
彩乃はことりの手を引く。
クラス中は やっぱ合成かよ、いくら陽と双子だからって相手にされるわけないわよね という声があがる。
そして、ファン二人を見てクスクスと笑う生徒達を見て、
ファンは顔を真っ赤にさせてキッと彩乃を睨んだ。
「あ、その合成写メ消さなかったらお兄ちゃんと陽君に言うから。
そしたら、お兄ちゃんたちからマネージャーに伝わって、
そこからテレビ局とかにも広まりそう!先輩たち、処分されちゃいますね。」
うすく笑う彩乃の笑顔は楓と良く似ていて、
説得力のある言葉にファンはごくりと息を飲む。
何も言葉を発しなくなった二人を横目に、ことりの手を引いて歩き出した。
「彩乃ちゃん、ありがとう。」
「全然いいですよ。あんなの慣れてるし。」
彩乃もモデルで、楓の妹だからという理由でたまに周りから言われることがあるのだ。
感心したようにことりは彩乃を見ると、彼女は恥ずかしそうに笑った。