男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-



いくら熱があるからといっても、自分一人で何かを食べることくらいできる。

口を開くのをためらっていると、楓はため息をついた。

「...大人しく口を開くか、押し倒されるか、どっちがいい?」

「っ!?」

後の台詞を聞いて驚いた表情をすると、楓は妖艶に微笑む。

風邪をひいているし、

それに今の状況からしてそういう雰囲気に持っていくのは可笑しいだろう。

ことりは言われた通り、おとなしく口を開いた。

それを満足そうにみて、楓は彼女の口にスプーンを運ぶ。

「美味しい?」

「...うん///」

恥ずかしいのを我慢して、そのまま食べ終えたことりは薬を飲むと楓に言われて横になった。

熱を測れば38.6度。さがる気配は見せない。

心なしか、先程よりも頭が痛く、怠い。

突然、楓はぎゅ、とことりの手を握ってきた。

ゆっくりと彼の顔を見れば、ぴたりと頬に手をあてられる。

「つめたい。」

「そう?」

「うん。」

楓の手は冷たくて気持ちが良い。静かに瞳を綴じれば、その手は頬から徐々に下へと向かい、首筋を通って、体のラインをなぞるように撫でていく。

「か、えで!」

咄嗟に声を張り上げれば、楓は小さく笑う。

「ことりの体、熱いね。」

その言葉にさらに顔に熱が集中するのを感じた。

弱々しく、腰あたりまでおりてきた彼の手を掴む。

「やめて。」

「可愛い。」

会話が成り立たない。潤んだ目で自分を見つめることりを見て楓の心拍数があがっていく。

無意識に、体が動いていた。楓はことりの手をベッドに押さえつけるとそのまま唇を重ねる。

突然の行為に驚いたが、徐々に深くなっていくそれに身をゆだねるしかなかった。











___二日後。


「...楓のばか。」

見事にことりの風邪を貰い、発熱した楓は怠そうにベッドで横になっていた。

「怠い...。」

「でも、うつした責任なら私にもあるし、ごめんね。」

「...ならさ、」

「?」

「キスして。」

「~っ!ばか!」


END
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