男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
番外編「彩乃と陽」
ことり先輩がスカイに入ってから、スカイは急激に成長した。
海外デビューも控えている彼らはすごく多忙で、私はお兄ちゃんにさえまともにあえていない。
「ハァ。」
私は思わずため息をついた。
ふとテレビを見れば、陽をはじめとするスカイのメンバーがCMに出ている。
「...。」
___陽君に、会いたい。
2か月、いや、3か月くらいは会えていない。
ことり先輩からアドレスを教えてもらったものの、なんて連絡すればいいのかわからず登録してそのままの状態だった。
私は陽君が本気で好きだ。
けど、この想いは叶うはずない。
携帯をぎゅ、と握りしめた時だった。ガラ、と玄関の扉が開く音が聞こえる。
(誰だろ?)
「あー、疲れた。」
「お兄ちゃん?」
「うん。ただいま。」
久しぶりに見たお兄ちゃんは、前より身長が伸びているような気がした。大人っぽい顔つきになっていて、私は目を見開く。
「お邪魔しまーす。」
そして、お兄ちゃんに続いて私がずっと想い続けていた人物が姿を現した。
「...陽、君。」
「久しぶり、彩乃ちゃん。」
陽君は、私を見て微笑む。きゅん、として心拍数が上がっていく。
「ひ、久しぶり、です。」
「何顔赤くしてんの気持ち悪い。」
自分をバカにするお兄ちゃんの声は無視して、私はじっと陽君を見る。
すると彼は、何かを思い出したように口を開いた。
「彩乃ちゃん、俺のアド知ってるよな?」
「う、うん。」
「俺、彩乃ちゃんの知らないからメール送っといて。登録するし。」
どうやらことり先輩は私のアドレスを陽君に教えてなかったようだ。
陽君にメールを送る口実ができた私は、こくこくと頷く。
お兄ちゃんが自室に戻っていく。それについていこうとしない陽君に私はメールを送った。