セブンデイズ・リミテッド(仮)

 学生たちが行くと言えば、だいたいここだろう。うるさいと思うほど、様々な音が入り混じる。パチコン台がある場所からは、かなりの量の煙がたちこめるここは、


「おっ、あったあった。――あぁ~やっぱ並んでるか。透、手始めにこれで対戦しようぜ!」


 そう、ゲーセンだ。


「いいけど、これあんまやったことないから上手くないぞ?」

「大丈夫。俺が鍛えてやるからさ」

「あぁ~お手柔らかに頼むわ」


 ゲームの事になると、誠司はかなりの力を発揮する。これを少しでも勉強の方に活用したら良いのに……なんて、本気で思うぐらいに。

 いつだったか、それを言ってみたことがある。すると、それは言われ慣れてる、だそうな。おそらく、樋代さんに言われてるんだろう。今の状態を見たら、たぶんその言葉が聞けそうだ。





「――――よし、もらった!」





 あっ、やられた。しかもあっけなく。

 時間にして、ものの二分といったところ。

 台から離れると、オレは誠司の隣に向かった。


「相変わらず強いよなぁ~」


 褒めれば自慢げに、やっぱり? なんて言いながらこちらを振り返る誠司。

 なんかその顔がムカつくから、オレはもう一度チャレンジすることにした。


「ぜってぇー負かしてやる」

「おう。何度でもかかってきなさい」


 今度はなんとか粘れ、さっきよりも長い時間戦えた。とは言っても、負けたことに変わりは無い。今のところ、五戦0勝一引き分け。もう、今日はこいつに勝てる気がしない……。


「――――?」


 再び誠司のそばに行った時、表情が変わった。何を見ているのかと思い視線の先に目をやれば――。


「?――やばっ。帰るぞ!」

「新台は、って。ダメだよなぁ~…」

「わかってるなら来いっ!」


 なかなか動かない誠司の手を引き、プリクラコーナー近くへ移動した。
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