御曹司の溺愛エスコート
昔から桜の涙に弱い蒼真。


「全部、盗まれちゃった……」


あの子達は全部思い出があった。
記念日ごとにひとつずつ増えていったクリスタルの置物。


「何を盗まれて悲しいんだ?」


泥棒に入られた事自体ショックだろうが。


「兄さまからもらったクリスタル……」


数日前に貰ったクリスタルのコアラも無くなってしまった。


「クリスタル? あれはシカゴへ来る前に全部処分したのではないのか?」


桜が大きく首を振った。


大切な思い出が詰まっているあの子たちを捨てられるわけがない。
誰にも信じてもらえず、失意のどん底にいた桜は蒼真から貰ったクリスタルの置き物が心の拠り所だったのだ。


それからの桜は子供が泣くように泣きじゃくり止まらなくなった。


「桜……」


蒼真は桜を抱き寄せた。


「大事にしていてくれたんだな……桜、日本へ行こう。無理してシカゴにいる必要はないんだ」


猫っ毛の柔らかい桜の髪を撫でる蒼真の手の動きは優しかった。


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