御曹司の溺愛エスコート
昼食時間が少しずれてしまったレストランは数組の客がいるだけだった。


ゆったりとしたイスに座ると桜は湖を眺め始めた。


「何にしようか?」


メニューを見ようともしない桜に蒼真は声をかける。


「ん……ケーキと紅茶」

「桜。昼食だよ? デザートは後で食べるといい」


蒼真は桜の選択に文句を言いメニューを見せた。


「じゃあ……ラザニア……」


3年前に比べると明るさが無くなってしまったようだ。
もっと活発な少女だったのに。


「……蒼真兄さま……別荘の……馬は大丈夫だった……?」


ずっと気になっていた。
置いてあったランタンの火が干草に移った時、嫌がる桜を望は組み伏せていた。

自分にも非はある。
思いっきり抵抗すると、望くんはぐらりとあおむけで倒れ、柵に頭ぶつけて気を失ってしまった。
燃え上がる火。
桜はやっとのことで繋がれている馬の綱を解いた。
覚えているのはそこまでだった。



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