御曹司の溺愛エスコート
真琴はそんな桜を見ていたがポケットの携帯電話が振動して着信を見た。


「はい。蒼真様」


真琴は桜から少し離れて背を向けると電話に出る。


『今どこにいる?』

「桜様にお食事をお持ちした所です」

『ちゃんと食べたか見て欲しい』


あの頃は少食の桜を心配して全部食べ終えるまで蒼真は付き合っていた。


「蒼真様が見られた方がよろしいのでは?」

『余計に食欲をなくされたら困るからな』


寂しそうな声の理由を真琴は分かっている。


「了解しました」


桜は最初だけ食欲旺盛な所を見せたが、次第にぼんやりし始めた。


「お口に合いませんか?」


その声に桜の肩が跳ねる。


「真琴さん。まだいたんですね」


トレーを置いて帰ったのかと思っていた。


「母に全部食べて貰うよう言われていますから」


実際には3人から。父と母と……蒼真様だ。




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