御曹司の溺愛エスコート
「本当に……私、何も分からなくて……」


記憶が無いのがこんなに辛いとは思わなかった。


この人たちは私を人殺しと呼ぶ……。
私は人殺しなの?


「桜、あなたが小さい頃から憎かったわ。私の愛するものを奪って行く子だったから。もういいかげん蒼真を帰しなさい!」


琴美と蒼真の母らしき女性に冷たく言い放たれる。


「そ、蒼真はまわりにどうこう言われて動く人じゃないです」


ひどくなる頭痛を堪えて言葉にする。


「お前がいなくなれば戻ってくるわ」


秋月夫人が憎しみの目で桜を見ている。
桜はふらつき壁に身体がぶつかる。
その時、ドアのノック音の後芳乃が入って来た。
紅茶セットをトレーに乗せたワゴンを押してテーブルに近づいてくる。



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