御曹司の溺愛エスコート
桜は厩跡に立っていた。
あの時の火事で建物は無くなってしまっていたが場所ははっきりと覚えていた。


望くん……。


持っていた花束を地面に置く。
その花束に白い物がハラハラと落ちてきた。
雪だ。


桜はその場にしゃがみこんだ。


ハラハラと舞うように落ちてきた雪はだんだんと大粒の雪へと変わっていく。
桜の髪に落ちては消えていく。


望くん、今まで来られなくてごめんね。
ずっと辛かったの。
望くんにも辛い思いをさせてしまってごめんね。


桜の頭が雪で白くなった頃、背後に足音がした。


「桜お嬢様、ここは寒いです。どうぞ部屋の中へ」


しゃがみこんで動かない桜に管理人は言う。



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