御曹司の溺愛エスコート
「桜!」


蒼真は気を失った桜をベッドルームに運んだ。


医者の蒼真だが突然の桜の気の失い方には驚きを隠せない。


どこか悪いのか? それとも考えられるのは妊娠……?


青ざめた桜の顔を見つめる蒼真の脳裏に浮かぶあの金髪の少年。


脈拍を調べ、熱がないかを今は手で確かめるしかない。


熱はあった。手で確かめているせいで正確には分らないが37.5度といった所か。


冷たい手を桜の額に乗せると、閉じる瞼が一瞬ピクッとした。


「桜」


夢を見ているのか、時折桜の顔が歪む。
そしてだんだんと苦しそうに顔を左右に動かしはじめた。
額や首、胸元から汗が噴き出すように出てきた。


どうしたんだ?


桜は日本に帰って来たことによって、今は見なくなった3年前の望が亡くなる事になった火事の悪夢を見ていた。


「い、いやっ!」


桜の口から声が漏れる。



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