御曹司の溺愛エスコート
愛理は婚約者の蒼真に冷たく問い詰められて、それほどまでに桜の事を愛しているのかと打ちのめされた。


周りのお膳立てもあり、半年で結婚を決めたふたりだが、愛理は蒼真に「好きだよ」と言われても、一度も「愛している」と言われたことがないことに気づく。


「母が俺と桜との事を知っていた……?」

「弟さんを殺されたって言っていましたけど、何があったのですか?」


蒼真が顔を下に向けて両手を額に置いたまま動かない。


「蒼真さん?」


婚約を解消したいと言われてショックは受けたが、愛理は愛されたいタイプ。
蒼真の気持ちが自分に無かった事を知り、急激に熱が冷めていくような感覚に陥った。


「……わかりました。私、蒼真さんと桜さん応援しますわ」

「え?」


愛理の突拍子も無い言葉に驚き、蒼真は顔をあげた。


蒼真のような完璧な男性と婚約を解消するのは惜しいかなとも思った。


「私、愛されたいんです。だから他の人を好きな蒼真さんはだめです」


愛理はいつも一緒にいる真琴にも嫉妬していた。


「愛理さん。ありがとう。この件は償います」





蒼真が出て行った後、愛理の口からため息が漏れる。


おば様がアメリカから桜さんを呼ばなければ、私たちはきっと結婚していた。
嫉妬させるだなんてつまらない事で桜さんを呼ばなければ良かったのに……。


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