御曹司の溺愛エスコート

部屋

玄関のドアを乱暴に叩く音で桜は目が覚めた。


「It stops, and it breaks.」
（やめて、壊れちゃうよ）


桜は大きな声でドアを叩く音を止めさせた。


「Who is it?」
（だれですか？）


ドアの前に近づくと聞く。


「リサよ」


隣の部屋のリサの声がしてホッと肩を撫で下ろす。


ドアを開けた瞬間、桜は驚き小さな声をあげた。


リサの横にもう二度と会わないと思っていた蒼真が立っていたせいだ。


仕立ての良いこげ茶のカシミアのロングコートを着た蒼真に圧倒される。


「桜」

「どうして……何で来たんですか……？」


桜のブルーグレーの瞳が蒼真をにらみつける。


「サクラ、私は部屋へ戻るわね。何かあったら呼んでちょうだい」


蒼真が桜の知り合いだとわかったリサは自分の部屋に戻って行った。


「入れてくれないのかい？」


ここで話をしていると、向かいに住んでいる口うるさいおばあさんの部屋が開きそうだった。


「入ってください」


桜は身体をひくと、蒼真を入れてドアを閉める。


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