御曹司の溺愛エスコート

理由

ミシガン湖が望めるホテルへ到着すると、タクシーを降りる。
蒼真は桜の手を握り、ホテルのレストランへ向かった。


ふたりはミシガン湖が眺められる窓席に案内された。


「食べたいものをなんでも頼むといい」

「……なんでもいいです」


桜の表情はずっと当惑したままだ。
まだろくに話もしていないので、蒼真がここにいる理由が分らない。


蒼真が流暢な英語で、ウエイトレスに注文しているのをぼんやり眺めていた。


「桜」


テーブルの上に手を置いていた桜は蒼真に重ねられてドキッとした。
慌てて引っ込めようとするとぎゅっと握られる。


「離して、蒼真兄さま……」


手を掴んだまま蒼真の手から顔へと視線を動かす。


「もう離れたくない」

「意味がわからない……」


茶色の瞳に見つめられて戸惑う。


「蒼真兄さまは愛理さんと婚約を……」

「解消したよ」


さらっと言われてさくらがポカンとした顔になる。


そこへ料理が運ばれてきた。


「とにかく食べよう」


桜に食べるよう促した。



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