御曹司の溺愛エスコート
「サクラ、もう上がっていいよ。疲れた顔をしている」


ハリーに言われるまで、桜はもくもくと本の分類や注文書を作成していた。


「はい。ハリー」


桜は年老いた店主に返事をすると、エプロンを外した。


疲れた……。


「気をつけて帰るんだよ?」


心配するハリーににっこり笑った。


******


桜は足早に自分のアパートに戻った。
暗くなれば治安の悪いこの場所は何が起こっても不思議は無かった。


鍵をバッグから出して開けようとすると、ドアが開く事に気がついた。


えっ……?
なに……?
鍵をかけたよね……?


おそるおそる静かにドアを開けて中へ入った瞬間、桜は悲鳴を上げた。
部屋の中が荒らされていたのだ。


ひどい……。


ドアから全てを見渡せるワンルームはめちゃくちゃだった。


震える足で窓際に行く。

台に置いた大事な物がすべて無くなっていた。


「ない……」


桜の目から涙がこぼれる。


蒼真から貰ったクリスタルの動物の置物がすべてなくなっていた。




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